将棋系男子のLifeStyle

里見香奈女流5冠奨励会退会。女流棋士とプロ棋士について

里見香奈、とうとう年齢制限にて奨励会退会となってしまいましたね。

一番好きな女流棋士だったので、とっても残念です。

女流の中ではもう相手もほぼ居ないですし、プロの世界に行ってほしかったなあ。

まだプロ編入の道が残されているので、諦めないで貰いたいですね。ただ厳しい世界だということは100も承知なので、彼女自身の今後の選択を応援したいと思います。

 

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 画像:http://shogiweblog.net/archives/2612

 

 

さて・・・今回は女流棋士とプロ棋士について考察してみる事にしました。

現状、女性でプロ棋士となった人は居ません。

将棋をやっている方なら知っているとは思いますが、一応書いておくと、

まずプロ棋士と、女流棋士というのは違います。

プロ棋士というのは、一般的には、奨励会試験に合格して奨励会に入り、三段まで勝ち上がって、そして最後の三段リーグで上位2名になって初めてなれるものですが、

女流棋士は、

1.日本将棋連盟の「研修会」(奨励会とは別物である)に入会して、C1クラスへ昇級

2.アマチュアが出場できる女性棋戦で、ベスト8以上になる

3.日本将棋連盟の「奨励会」に入会、2級以上で退会する

以上のどれかの条件を満たす事でなれます。つまり、プロ棋士とはなれる条件の難易度や、あるいは棋力においても、かなり格差があると言って良いでしょう。

実際、自分も元女流アマ名人の方や、女流棋士の方とお手合わせした事がありますが、お世辞にも強いとは言えず、一度も負けた事もありません。上位の方でも概ね平均的には将棋倶楽部24で四段程度です。

 

では女流棋士の方が皆そうなのかと言うと、そんな事はなく、とても強い方も多くいらっしゃいます。その代表的な方を1名上げるとすれば、恐らく現状女流では最も強いであろう里見香奈女流5冠です。

彼女は、女流におけるタイトル6つのうち、5つを女流史上初で獲得しました。実力的に考えてもそれは当然で、奨励会に入ることを考えず女流だけで活動していれば、史上初6冠女王となっていたとしてもおかしくなかったでしょう。実際に残す女流タイトルである女王保持者は奨励会初段に所属している加藤桃子。彼女もとても強いですが、実力的には、奨励会三段まで駆け上がった里見香奈の方が上です。

しかし、彼女の選んだ道は、6冠女王では無く、史上初の女性としての棋士でした。

 

棋士というのは勿論、年に2度行われる30人程度の奨励会三段リーグにて、1位もしくは2位となって初めて名乗る事が出来る、棋士です。

将棋にあまり詳しく無い方には、ちょっとこんがらがって来てしまうかもしれません。

一旦、整理してみますね。

まず、通常、プロ棋士は先ほども述べたように奨励会に入会して、三段リーグで上位2名になって初めてなれるものです。(※ただし特例としてフリークラス編入試験というものもある)

そして女流棋士というのは、なれる条件が全く異なります。

では里見香奈は女流をしながらも、なぜ、奨励会に所属していたのかという話になりますが、

これは現行のルール上、女流棋士奨励会の掛け持ちが認められているからです。

更に言うと、里見は女流棋士の間に奨励会編入試験を受け、1級として受かったからです。

なお、元々は、女流と奨励会の掛け持ちは認められてなく、女流が奨励会に所属する場合、女流を休会する必要がありましたが、里見が奨励会1級編入試験に受かった際、当時、里見が女流棋士としてとても活躍していた事などもあり、女流と奨励会の掛け持ちが認められる事になったのです。それにより、それまで加藤桃子も当時奨励会1級ということで女流の棋戦には出ていなかったのですが、初出場し、王座を獲得しました。

 

ちなみに里見香奈は、1級で留まるどころか、初段になり、二段となり、そして女性史上初となる奨励会三段になっています。これはとても偉業です。奨励会三段までに行くのに、果たしてどれだけの実力や、覚悟が必要なのか。正直、自分が語るのはとてもおこがましいとは分かってます。しかし、奨励会三段と言うのは、まずアマチュアレベルで考えると、間違いなくトップレベルです。と言うのも、アマチュア界の棋戦で優勝する人が元奨励会三段だと言うのは、よくある話だからです。

つまり、それだけでも果てし無く、とてつもない努力と才能の2つを兼ね揃えてると言っていいでしょう。

だからこそ、里見香奈のその女性史上初となる、プロ棋士への挑戦は、将棋界の誰もが注目し、また、期待したのでは無いでしょうか。

 

ですが、儚くも、奨励会三段リーグで上位2位になる、もしくは勝ち越しをすると言う成果を残す事は出来ませんでした。※勝ち越しをした場合、年齢制限があったとしても、次期のリーグ戦に出場することができる。

 

これは、奨励会三段リーグの厳しさという観点で考えれば、全くもって仕方無いことなのですが、これにより、里見香奈女流5冠がプロ棋士となる道は、遠ざかってしまいました。

ちなみに道が閉ざされたではなくて、遠ざかったという言い方をしたのは、それには理由があり、プロ棋士への道は奨励会だけではないからです。

その道というのは、フリークラス編入試験です。

フリークラス編入試験というのは、マチュアまたは女流棋士であって、プロ公式棋戦にアマチュア枠や女流枠から出場し、最も良いところから見て10勝以上、かつその間の勝率が6割5分以上の成績をおさめることが必要です。

この特例には現在プロ棋士瀬川晶司さんが今泉健司さんが通って、プロとなっています。ちなみにお二方も元々は奨励会三段でしたが、三段リーグを抜ける事が出来ませんでした。そのため、アマチュアから再スタートをし、アマの全国大会で優勝するなどをしてプロ公式戦出場権を獲得し、そこで上記の成績を修めたので試験を受ける事ができました。

なお、試験内容は四段の棋士5人中、3人に勝つということです。

言うまでもなく、この道は本当に有り得ないぐらい、道のりが長いです。

まず試験を受けるためには、プロの棋戦に出るために、まずはアマチュアの県大会で優勝して、次に全国大会に出場し、ここでも入賞しなければならず、この前提条件だけでもかなり道のりが険しいのにも関わらず、その上でさらにプロ公式戦に出場し、良いところから見て10勝以上、かつその間の勝率が6.5割以上の成績を修めなければなりません。

本当にこの道のりはおかしいぐらい長いです。

ですが、そうした方法もあるという訳です。

 

ただ、里見香奈女流5冠には実はまだプラスな事があって、それは、アマチュアの大会で優勝する必要が無いということです。それは、女流棋士でもタイトル戦プロの公式棋戦に出場することが出来るからです。勿論、枠が限られているので、条件はありますが、女流の中で最も強い里見であれば出場する事は容易だと思います。

つまり、プロ公式戦に出場することは、現状、可能だということ。

あとは、公式戦で6割5分以上の勝率で10勝して、四段に3人に勝つことが出来ればプロ棋士になれるのです。

ただそれでも三段リーグを抜けてきた人たち相手に勝ち越す必要があるので、とても難しいですが、可能性はまだまだあるという訳です。

 

さて次は今まで、女性がプロ棋士になれなかった理由についても考察してみようかと思ったのですが、これはこれでとても難しいテーマで、現状、様々な説が出ていて結論は出ておらず、かつ、話をするととても長くなってしまう為、また今度にしようかと思います。

なお自分は、男女の能力的な差というよりも、環境や、文化などが影響していると思っております。

 

それではこの辺で。